「汝、星のごとく」を聞き終わりました。
辛い。辛すぎる。救いはあったけど胸が締め付けられるお話だった。
個人的には尚人くんの結末がショックでした。
ひどい予想ですが正直、彼はもっと早くこうなるのではないかと思っていたんですが…。櫂くんと楽しそうに未来を語るシーンは切ないながらも希望が持てるシーンだったので、もしかして暁海ちゃんに続いてここから二人で再起していくんだろうかと思っていたのに。
彼はぎりぎりのところで命を繋ぎとめていたんでしょうね。そんな彼の背中を押してしまったのは絶望ではなかった。相方の櫂くんが与えた、到底叶いもしない一縷の希望だった。悲しすぎるやろこんなの。現実との果てしない乖離に辛くなってしまったのか。ほんと櫂くんと尚人君が最後まで救われなさ過ぎて辛い。
あと田舎特有の閉鎖的で排他的な社会や男尊女卑、陰湿さが物凄くリアルに描かれている…。偶然にもこの小説の舞台となっている地方に長く住んでいたんですが本当にこういうことが普通にまかり通っている世界です。まず25歳を超えて未婚、子供なしの女は人間扱いされないし、娯楽が無いので人のうわさ話が大好き、何かしらあれば瞬く間に町中に噂が広がってしまう。身内をかばう性質があるので身内には協力的でもよそ者には排他的。私の親戚もよそ(関西方面)から来たお嫁さんを親戚全員で苛め抜いて、男の子を産んだら用済みとして追い出したりしてました。ひどすぎるな。
あと集落ごとに階級があって下々の集落は差別されていて交友も制限されていたりとか。令和の今でもこんな感じです。中世か…?
なので暁美ちゃんをとりまく環境の歪さが物凄くわかる…この島でなければきっと暁美ちゃんもお母さんもここまで苦しむことはなかったと思う。だけどこの島にいなければ櫂くんと巡り合うこともなかった。同作者様の「流浪の月」に続いて、この二人も共依存っぽい感じがします。二人にとってお互いはいつまでも同じ場所にある「夕星(ゆうづつ)」だった。二人が東京と瀬戸内で星を見上げてお互いを思い出すシーンは、タイトルにもなっている比喩が効いていてすごく良かったな…。
描かれているネグレクトやヤングケアラーの実態もリアルでつらい。血縁の情が人生の呪縛になるっていう。特に暁美ちゃん…私も病気持ちなのでいつかこんな風に子供の人生の足枷になってしまったらどうしようと思います。子供の人生は子供だけのもの、生まれたからには自分の人生を一番に考えて大切に幸せに生きてほしい。最低なことを言ってしまうけど暁美ちゃんのお母さんのようになる前に私はどこかの施設に入るかこの世とおさらばしておきたい。
あとプロローグがエピローグと共通していたのも凄く良かった!同じ内容なのに、全編を聞いたあとだと180度印象が変わって聞こえるという構成が素晴らしい。櫂君の遺作がそのままこのお話のタイトルというのも凄くいいな…。
とても良かったです。ですが精神が元気な時に読んだ方がいいかも…。